お知らせ

2025.09.29

第66回 大気環境学会年会にて佐藤康太朗さん、沢部麦さんが発表を行いました。佐藤さんは学生・若手研究者優秀発表賞を受賞しました

 令和7年9月17日~19日に名古屋大学 東山キャンパスで開催された第66回大気環境学会年会に、本学大学院生の佐藤康太朗さん(理工学研究科システム理工学専攻)がポスター発表を 、沢部麦さん(理工学研究科システム理工学専攻)が口頭発表を行いました。 

 大気環境学会は、1974年に設立された学会で、大気環境の保全と改善を目指し、関連する学術的・技術的な研究や情報交換を推進しています。大気汚染の成因や影響評価、環境政策、測定・分析技術の開発など幅広い分野を対象とし、学術誌『大気環境学会誌』、『Asian Journal of Atmospheric Environment 』の発行や、年会・シンポジウムの開催を通じて、国内外の研究者・技術者の交流と研究発展に寄与しています。


 また、佐藤康太朗さんは、学生・若手研究者優秀発表賞(ポスター発表部門)を受賞しました。大学のHPに記載


★佐藤康太朗さんのコメント

 この度は、第66回大気環境学会年会におきましてポスター賞を受賞させていただき、誠にありがとうございます。発表に対し貴重なご意見をくださった皆様に、心より御礼申し上げます。

 

 発表タイトルは「GC/MSを用いたバングラデシュ・ダッカにおけるPM2.5中の炭素類の濃度測定と発生源推定」です。本研究では、世界で最も大気汚染が深刻な都市の一つであるバングラデシュの首都ダッカを対象に、PM2.5の発生源解明を目的としました。特に、PM2.5の主要成分である有機性炭素(OC)や元素状炭素(EC)などの炭素成分に着目し、長期的な濃度変動を観測しました。その結果、PM2.5濃度は汚染が深刻化する乾季に著しく高く、降雨の多い雨季に低いという明確な季節変動が確認できました。さらに、炭素成分の分析から、乾季のPM2.5には乾季はバイオマス燃焼など生物起源の寄与が大きい可能性が示唆されました。

 ポスター発表では、多くの研究者の方々が足を止めてくださり、測定手法や解析結果について様々な視点から鋭いご質問や有益なアドバイスをいただくことができました。自分の研究を説明する過程で、改めて今後の研究活動や論文執筆に向けて、取り組むべき点がより明確になりました。また、専門分野の異なる方からも「人々の健康を守るために重要な研究ですね」と温かいコメントをいただけたことは、大きな自信と励みになりました。

 他の研究発表では、アジアの各都市の大気汚染に関する報告が多く、汚染特性が異なることを学び、多くの知見を得て大変勉強になりました。

 学会期間中は、川島先生をはじめ、先生とご交流のある他大学の先生方や企業の研究者の方々と食事をご一緒させていただく機会に恵まれました。海外でのフィールド調査のご苦労や、研究成果を社会に還元することの重要性など、貴重なお話を伺えました。経験豊富な皆様のお話はどれも興味深く、研究者としての心構えを学ぶ、非常に有意義な時間となりました。


★沢部麦さんのコメント

 発表タイトルは「水溶性イオン及び窒素安定同位体比を用いたバングラデシュ都市部のPM2.5の発生源解析」です。本研究では、大気汚染が非常に深刻なバングラデシュ・ダッカ市にて捕集したPM2.5を分析し、重要な成分であるアンモニアガス(NH3)の発生源について、コロナ禍を経た5年間の長期トレンドを調査しました。解析には、PM2.5と水溶性イオンの濃度、アンモニウムイオンの窒素安定同位体比(δ15N)を用いました。その結果、PM2.5濃度はコロナ明けから年平均20 μg/m3以上増加し、NH3の発生源は6~7割が肥料や廃棄物などの農業由来であることが判明しました。しかし、これらのほかにバイオマス燃焼も発生源として疑われており、今後はその点も考慮した調査や、他地域との比較も行っていきます。

 発表当日を迎えるまでには、正直かなり苦労をして資料を準備しました。膨大な量のデータから何を取り上げるのか、結論が言い過ぎになっていないか、同位体に詳しくない人へどう話せばいいか、などを考慮し、修正を繰り返しました。その甲斐あり、本番では練習の成果を十分出せて、達成感がありました。また同時に、自分の理解が足りないところに気づけて、若干の悔しさと、今後の研究への意欲も手にしました。

 3日間の学会では、本研究と近いトピックから、やや離れた内容まで、幅広く聴くことができました。その中で、環境分野内で似ている・異なる考え方を知れて大変勉強になり、日ごろの楽しみや苦悩を話して、繋がりを作ることもできました。加えて、「この場にいる数百人が、自分と同じように日々研究活動を行って、発表まで頑張ってきたのだ」と思うと、研究の世界の奥深さと、熾烈さを感じました。

 最後になりましたが、発表まで何度も練習と指導をしてくださった川島洋人先生、サンプル捕集などにご協力いただいたサラム教授及びダッカ大学の方々、解析の相談に乗ってくださったOBの加藤さん、一緒に活動をしてくださっている研究室の皆さんに、深く感謝申し上げます。





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