研究内容
高分解能精密質量分析計を用いた安定同位体分析

近年、高分解能精密質量分析計(High-Resolution Mass Spectrometer: HR-MS)の性能向上により、安定同位体比の測定にも応用できる可能性が広がっています。従来、安定同位体比分析は主にIRMS(Isotope Ratio Mass Spectrometry)で行われてきましたが、HR-MSを用いることで、高い分解能と質量精度を活かした化合物特異的な安定同位体比の測定が可能となりつつあります。
当研究室では、Orbitrap型HR-MSを用い、有機化合物中の炭素安定同位体比や窒素安定同位体比の定量手法の開発を進めています。特に、標準試薬を用いた精密な質量差の解析、および内部標準法・外部校正法の最適化により、従来法と比較して迅速かつ非破壊的な測定法を目指しています。
現在は、PFAS(有機フッ素化合物)や農薬などの環境汚染物質を対象とした同位体分析法の確立を進めており、発生源推定や環境動態の解明への応用を視野に入れています。また、Thermo Fisher Scientific社のエンジニア等とも連携し、国際的な同位体分析技術の高度化に取り組んでいます。
将来的には、HR-MSを活用した安定同位体比分析が、食品・環境・生命科学といった多様な分野での応用へとつながることを目指しています。
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